絶滅の危機 南パサディナより
パサディナ・フリーウェイをダウンタウンから北上し、まさに南パサディナ市に入るところに大きな看板が立っている。 「南パサディナ 絶滅の危機にある町!」
かれこれ30年以上も前から710番フリーウェイ(ロングビーチフリーウェイ)は南パサディナの直前で工事をストップしている。 道路公団(カルトラン)が環境アセスメントを何度もやりなおし、公聴会にかけても南パサディナ市の住民は頑として受け付けないのである。 理由として千軒以上の歴史的な住宅建造物が破壊されてしまう!ということである。 しかしながら周辺の町では中断された高速道路からあふれた車が町中を混雑させており、なんとも我慢のできない状態がずっと続いている。
高校のフットボールで隣町と試合をするときでも、隣町の応援団が「フリーウェイを通せ!」と叫べば南パサディナの応援団は「710番フリーウェイ反対!」と叫び返す具合である。 小学生の時から「710番フリーウェイ反対!」と親子で行進する程である。 親から子へ、子から孫へ、この戦いは受け継がれるだろう。
それではその保存したい歴史的な住宅建築は・・・というとせいぜい築70年から100年程度のカリフォルニア・バンガロー・スタイルと呼ばれる木造建築を代表にする 普 通 の住宅群である。
日本的に考えれば歴史的保存物と言えば1000年の歴史を持ち、国が指定をして観光客も押し寄せる・・・・といった図式である。 歴史の無い国ゆえ、かわいそうに! この程度の建物を歴史的保存物に指定しなきゃいけないのか!
紅葉の季節にシカゴへ行く機会があり、シカゴの郊外のオークパークという町へフランク・ロイド・ライトの住宅を見に行った。 そこには、ライトの住宅がたくさんあり、皆きれいにハロウィーンの飾り付けをし、人が住んでいた。 日本なら明治村のようになってしまうのかなぁ・・・などと思いながら、「生きている」歴史的建造物に感銘を受けた。
南パサディナ市も同じく、「生きている」歴史を守るために住民が一致団結して戦っており、そして、自分たちが参画する街づくりの中にまた新しい歴史を自分たちで作っていくわけである。
歴史が浅い国だからこそ、歴史が手に届くところにあり、また自分たちもその歴史の一角を形成する意識をもつ。 こうした街づくりの考え方の中で始めて歴史的なものの価値が見出せるのではないだろうか。
し か し
その為に我々アーキテクトは市の都市計画課で指導を受け、文化伝統委員会(カルチャル・ヘリテージ・コミッション)の承認をもらい、建築審査委員会(アーキテクチャル・レビュー・ボード)にプレゼをし、公聴会で質疑に答え、「窓の形が悪い!」だとか、「デザインの方向性が見えない!」だとか、いいたい放題のコミュニティーの意見を聴取し、設計をすすめなければならない。 この辺がアーキテクトの独り言の本音である。